飽きっぽい私が編み物にはまるまで

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編んで心踊る生活

水中に作品を浮かべる

洗面所の流しにぬるま湯を溜めて、おしゃれ着用洗剤を数滴入れて、ソックスを沈める。セーターやショールの時は湯がみるみる吸われていき、重くなる。浮かべながらやさしく押し、吸わせては押し、を繰り返す。

編み目が浮かび上がりながら整っていくのをじっと見つめるのが、私は好きだ。

最後は優しく絞り、1分間だけ脱水機に入れる。(脱水機は我流で一般的にはすすめられない方法だが。)  水切りしたら、カーペットタイルを床に敷き、作品を置いて形を整える。ソックスならソックブロッカーに履かせて物干しに吊るす。

最近、この作業をする時、一番充実した気分を感じる。

ショールのブロッキング

昔は時々シーズンによって編み物にハマっていたが、たいてい最後まで辿り着くことがなく、編みかけでそのシーズンを終えてしまう事が多かった。そして完成の充実感はなかなか味わうことがなかった。今、編み物再開して、3年経っている。冬だけでなく夏も編み続けている。今回、なぜこんなに長く私は続けていられるのだろうか。

誰かに作る

ソックスを親だけでなく、友人・同僚に贈るのが楽しくなった。「手編みの○○をあげる」は、異性だけでなく同性でも相手に重いと思われがちで、あげたことがなかった。

でも、ソックスは人に贈るアイテムとして適していると思う。セーターやマフラーと比べて、もらってもそんなに重い感じがしないのではないかと、勝手に思っているから。たとえ履かれなくてもなんとなく飾っていてもかわいいし。贈る側からすれば、身につけられなくても大丈夫な言い訳があるので、傷つかない。

何より、さまざまな色・形・模様の冒険ができて、作るだけで自分自身が満足なのだ。母に編む時、色の好みや今の足の形などに合わせることに想いを馳せて、想像通りにできて、身につけてもらう。すると、これまで感じたことのない嬉しい気持ちになる。というのも、うちの家族は、互いに褒めたり感謝する言葉を直接的に表現しない、あまのじゃく的なコミュニケーションしかとってこなかったのだ。でも最近、母は身につけると「いいねぇ」という。この「いいねぇ」を聞くと嬉しくなるのだ。

編み物版SNS、すごい

久々に編み物を再開してあまりに編み物界が変化したことに驚く。

まず用具が違う。昔の道具はたくさんあるのだが、ほとんどが棒針(長い棒状態の編針)。でも今は輪針が主流だ。輪針はスペースを取らないので、持ち歩きができる。様々な場所で編み物をしたいという気持ちにさせてくれる。そして、輪針でなんでもできるのだ。筒状のものだけでなく、往復編みもするし、筒状でもマジックループという方法で輪の直径よりも小さな筒状の編み地(靴下や手袋、セーターの袖など)を編むことができる。こういう情報は、これまでの私の持っている編み物本には載っていなくて、全て、YouTubeや Instagramから学んでいる。

輪針のマジックループ手法でソックスを編む

何よりすごいのは、Ravelry(ラヴェリー)の存在だ。これは、編み物版のCookpadみたいなSNSのことだ。作りたいものをアイテムごとに検索できる。また、糸の太さや長さから作れるものを検索したり、同じパターンでも異なる糸素材・色の作品が投稿されていて自分の作りたいものをイメージしながら材料を考えることができる。もちろん、ここからパターンを1アイテムごとに入手できる。有料・無料と両方とも豊富にあり、世界中の編みびとが投稿しているので、見たことのない編み方が紹介されていたりする。昔は本を買わないと何もできなかったのに、今はYouTubeとRavelryがあればなんでも作れるのだ。しかも、自分の作品も投稿できるし、世界中の人と、編み物を通して繋がることができる。

Mystery MusiKAL pattern by Stephen West

最近、編み物界では「カル(KAL)」という言葉をよく見る。Knit Along(いっしょに編もう!)という意味で、何か限られた条件で一緒に同じ期間に編みましょうという動きのことだ。同じパターンを編もう、同じデザイナーのパターンを編もう、赤いものを編もう、などなど。中でも、MKAL(Mystery KAL)というものもあり、これはデザイナーが自分のパターンを小出し(Clue)に発表し、最終の形を知らない状態で、みんなで同じパターンを編もうというもの。有名なデザイナーのStephen WestさんのMKALは世界中で人気があるようで、私も一昨年、去年と参加した。参加といってもそのパターンを購入して、自分なりに糸を選び、取り組むだけ。でも、これをさらに楽しもうと、個々にInstagramなどにclueごとに完成した状態を互いに投稿しあったり、zoomで同時間に集まり編んだものを見せ合ったり(YouTubeに公開されているものが見られる)、それぞれのやり方でこのMKALを年間行事として楽しんでいる。場所が違えども、一緒に同じ何かを作っているという一体感と達成感が味わえる不思議な経験だった。

Mystery MusiKAL pattern by Stephen West
去年のStephen WestのMKAL作品

文章パターンを読み解く

Ravelryで出されるパターンは、日本の編み物本で一般的な図式(チャート)とは異なり、文章タイプのパターンが多い。というのも、他の国ではパターンは文章で表すからだ。文章といっても、複雑な言語力は多分必要なく、各段ごとに暗号を読み解く感じだ。熱が冷めずにハマっている理由の一つが、この読み解く感じが魅力的だからだ。

例えば
Row2(WS): K1, k2tog, knit to the last 3 sts on the needle, slip the last 3 sts purl-wise wyif.
「2段目(裏面): 表編み1目、2目一度、最後の3目まで表編み、最後の3目は裏目を編むように針を入れて、すべり目をする」

これは2段目の編み方の指示。略語が多いだけで、その略語の意味を知れば、その通りに編むことでその段は完了。

減らし目の時、日本の一般的な本では、アイテムの図がありその横に、「x-y-z」というxyzには数字が入っているのが何箇所かあるだけ。これは、「x段ごとにy目をz回減らす」みたいな解釈をするのだが、全体で何段編むとしか記されていないから、自分で段ごとに計算確認しながら進めていく。どうも私はこれがあまり好みではない。

一方、文章パターンでは、段ごとの指示に従っていき、「あら、自然と減っている」という感じで進められる。こちらの方がやりやすいのだ。

これは好みの問題だけど、文章だと、だんだん慣れてくると、読みながら、どんな形になるのか想像できるようになる。この想像する感じもワクワクして私は好きだ。

心地よいからやめらめない

編む時、私は無心になる。瞑想しているような感じなのかも。こんな時間が、今の私にはとても心地よい。それに、編み物界の進化でワクワクする機会が多くなったおかげで、飽きっぽい私が、編むことに飽きてない。自分がまるで進化しているような気分になる。これだから、やめられない。