うちの植栽
朝7時半、張り切って、自転車で実家に向かう。涼しくなって自転車で向かうには気持ちの良い朝。植栽付近を掃除して、じっと木を観察する。3本ある木のうち一番太い幹は、直径10センチ以上はある。よく育ったなあ。
父は、他界する数週間前に、この木々を剪定してくれていた。それから5年、玄関横にある3本の木はぐんぐん成長して、ついに電線の高さを超えてしまった。一度だけ、高枝バサミで剪定を試みたが、枝の太さにハサミが入らず、そのままになっている。
その成長は、縦だけでなく横にも広がりだし、狭い路地にある家の前の通りは、トラックなどの背の高い車が通る時には、厄介なことになっていたのだと想像する。ずっと気がかりだった。
業者に依頼
意を決して、業者に伐採を依頼することにした。
馴染みの業者はいないので、新たに探さなければならない。生活のサポートをしてくれるアプリがいくつかあるが、そのうちの1つ、ミツモアさんで検索して依頼した。
依頼のために入力した情報は、依頼内容、地域 (詳しい番地までは入れないで良い)、さまざまな角度から撮影した植栽の写真 (正面、高さのわかるように全体像、根本など)、駐車スペースの有無くらいで、ざっと見積もりが6~7社から瞬時に送られてきた。
値段はもちろんだが、できれば実家の近隣にある業者の方が頼みやすいなと思い、1社を選んだ。念の為、Googleの口コミなども確認し、特別に悪い評判はないし、納得の価格を提示いただいたので、ここに依頼することに決めた。その後、ミツモアのプラットフォーム上で連絡を取り合い、日時の調整をし、商談が成立した後に、こちらの個人情報、支払い情報を伝える仕組みのようだ。
依頼が成立した時点で、今まで自分でやりきれなかったことをお願いできたと安堵し、満足感にひたっていた。
作業当日
当日まで特に追加で問い合わせされることはなく、2人の職人さんは、依頼通りに8時半に到着し、早々に作業を黙々と始める。作業をじっとみているのが楽しかった。が、ふと「職人さんにしてみればやりづらいかもしれない」と気づき、家の中で待つことにする。
枝を払い、幹を何回かに分けて切り、ついに一番下まで幹を切ってもらう。3本の木を切った後の枝葉・木のゴミの量と、枝や幹の太さにびっくりする。「高枝バサミなんかで切れるわけないよな、、お願いして正解だった」とまた満足する私。職人さんたちは、切りながら段取りよくゴミを回収し、あっという間にきれいになった。

カイヅカイブキの爪跡
最後に、この木の意地というか、爪跡を見ることになる。
玄関側の木が、2階の下の部分にある雨どいの中を貫通したまま成長したため、太い枝がといの中に突っ込んだ状態になっていて、抜くことができなかった。その枝の上下を切って短くしてもらったが、無理やり抜くと雨どいが割れそうなので、そのままに。職人さん曰く、年月が経つうちに、腐ってきっと取れるだろう、とのこと。

職人さんの作業が終了し、最後の確認をされた時、ふと思いつき
「この木の名前は何ですか」と尋ねた。
この木がカイヅカイブキという名であることを初めて知った。職人さんはやや驚いた表情だった。そりゃ木の名も知らずに伐採を依頼したわけだしね、、、驚くよな。
ご近所に迷惑になることだけを気にしていた自分を情けなく思った。
考えてみれば、この木々は40年以上この土地に存在した。それがあっけなく伐採されてしまったのだから、、
父と母が、毎年、年末あたりに、はしごに上って剪定をしていたことを思い出す。なのに、これまで一度も実家の植栽に関心を寄せたことがなかった自分。
今頃になって、少し寂しい気持ちになっている。この雨どいに埋まっている爪跡のような枝の一部が、残ってくれたことに、ありがたい気持ちになった。

